労働問題
労働問題について
「残業代を払ってもらえない」、「不当に解雇された」、「セクハラをうけた」、「パワハラをうけた」など会社あるいは上司や同僚との関係でお悩みの方が増えています。
しかし、とりわけ在職中の方は、かえって立場が悪くならないか、職を失ってしまわないか、などと考えてしまい、じっと耐えておられる方も少なくないのではないでしょうか。
1日の中で最も多くの時間を過ごす会社での時間がつらく苦しいものであることは、大きな不幸です。
また、法律に則った正当な権利を行使することは何ら責められるものではありません。
私たちが、正当な権利行使のお手伝いをいたします。
一人で抱え込まれずに、ご相談下さい。
不当解雇
使用者(会社)による解雇権の行使は、法律上、様々な形で制限されています。
解雇が相当であると認められるケースはむしろ少数であり、法律的に見ると解雇の有効性に問題があるケースが多くみられます。
ある程度しっかりした会社であれば、容易に解雇できないことがわかっているため、退職勧奨をして従業員が自発的に辞めるようもっていくでしょう。
しかし、納得できないのであれば、会社の退職勧奨に安易に応じて「退職合意書」にサインすべきではありません。
サインをする前に、専門家である私たち弁護士にご相談下さい。
もし、法律を無視したワンマン経営者などに解雇された場合には、解雇通知書など「解雇」であるということを証明する書面を会社に出してもらうことが重要です。
社長に「お前はクビだ!!」といわれただけでは「解雇の意思表示」があったとは認められないからです。
セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクハラという言葉も現在では一般的になり、法律においてもセクハラについての条文が設けられています。
セクハラは「対価型」と「環境型」に分類されます。
厚労省は指針において、その定義・具体例を以下のように示しています。
♦対価型セクハラ
対価型セクハラとは、「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること」である。
- 事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該労働者を解雇すること
- 出張中の車中において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該労働者について不利益な配置転換をすること
- 営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該労働者を降格すること
♦環境型セクハラ
環境型セクハラとは、「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」である。
- 事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
- 同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
- 労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと
セクハラ被害を受けた場合、加害者当人に対して、セクハラ行為を直ちに止めるよう警告することの外、不法行為に基づく損害賠償請求をして金銭による賠償を求めていくことが考えられます。
また、加害者のセクハラの態様によっては刑事告訴も検討の対象となります。
加えて、事案によっては、加害者だけでなく会社に対しても、是正要求や損害賠償請求をすることが可能です。
加害者のセクハラ行為が「職務の執行につき」行われたと認定されれば、会社に使用者としての責任が発生しますので、会社に対しても、不法行為に基づく損害賠償請求をすることが可能となります。
会社の業務に関連する場所や時間で行われたセクハラ行為の多くは、「職務の執行につき」と認定されるといえます。
また会社には、雇用契約に付随して職場環境を整える義務がありますので、社員のセクハラを知りながら放置していた、あるいは不十分な対策しか講じなかったというような場合には、債務不履行に基づく損害賠償請求をすることも考えられます。
セクハラは多分に主観的な面もあるため、その判断が難しい問題ではありますが、そもそもセクハラといえるかわからない場合であっても、ご不快な思いをされているようでしたら、一度ご相談下さい。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワハラとは、簡単に言えば、上司などによる権力や地位を背景とする、いじめ・嫌がらせのことで、昨今、トラブルが多発しています。
酷いケースでは、精神的に病んでしまい、退職を余儀なくされる、さらには自殺するという事態にまで至ってしまいます。
雇用を確保すること自体が困難な現在にあっては、早々に転職するという選択肢がとりづらいことが、事態をより深刻化させているのかもしれません。
明らかないじめ行為の外、上司による度を超した叱責、あるいは無視、意図的に過大な仕事を押しつける、など、通常の指導・指示を装った悪質なケースまで、その形態は様々です。
人格を無視した悪質な加害者や会社に対して、泣き寝入りすることはありません。
自らの行為に対する責任をきっちりととってもらい、再スタートをきりましょう。
退職させてもらえない~在職強要
最近、労働者側からのご相談で増えているのが、「会社を辞めたいのに、会社(社長)が退職を認めてくれない」という、内容としては、ごくシンプルなご相談なのですが、退職を申し出ると、社長や上司に恫喝されたり、何ら法的根拠のない金銭的なペナルティーを、さも正当な金銭請求であるかのごとく請求されたりと、会社側の対応が悪質なケースが目立ちます。
法律的に言いますと、まず大前提として、労働者には「職業選択の自由」(憲法第22条)があり、そのあらわれとして「退職の自由」もあるといえます。
ただ、「退職の自由」があるからといって、完全に自由に退職できるわけではなく、民法や労働法の規定において、一定の制限がされています。
♦期間の定めのある労働契約の場合
あらかじめ契約期間に定めのある労働契約の場合については、まず民法上、原則として、労働者には契約期間中、労務を提供する義務があり、重い病気等で働けない状態になったときなど「やむを得ない事由」がある場合を除いて、期間の途中で退職することはできません。
また「やむを得ない事由」が労働者側の過失によって生じたものであるときは、労働者は使用者に対して、生じた損害を賠償する責任を負うとされています(第626条及び第628条)。
ただ、退職が認められないという拘束力のある契約期間については、民法上、最長5年とされていますが(第626条)、労働基準法は、これを、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、原則3年に制限しています(第14条1項)。
さらに、労働基準法は第137条において、あらかじめ定めた契約期間が1年を超える場合は、一定の場合を除き、民法の規定にかかわらず、1年を超えた日以後はいつでも退職することができるとしています。
このように、民法と労働基準法の規定が相違する時は、特別法である労働基準法の規定が、民法の定めに優先します。
よって、期間の定めがある雇用契約の場合でも、ほとんどの場合、1年を経過していれば、いつでも退職することができると考えていただいてよいでしょう。
仮に、1年を経過していない内に、労働者が、自己の一方的な都合によって仕事を辞めてしまったとしても、使用者は、代替人員を速やかに確保して損害の発生を抑えることができるケースがほとんどであり、労働者に対して、雇用契約の債務不履行責任に基づいて、高額の損害賠償義務が認められることは、実務的には、そうそう起こり得ることではありません。
♦期間の定めのない労働契約の場合
労働契約の期間に定めがない場合(正社員のほとんどはこれにあたります)は、いつでも労働者側は解約(退職)の申入れをすることができ、申入れの日から2週間を経過したときに雇用契約は終了(退職)となります(民法第627条1項)。
ただ、「期間によって報酬を定めた場合」には、「当期の前半」に解約申入れをすれば、「次期」以後に雇用契約が終了(退職)となるとされています(民法第627条2項)。
この点、完全月給制(遅刻、欠勤による控除なし)を前提にご説明しますと、給与の締め日までの1か月間が「当期」となりますので、締め日の15日以上前(1か月の前半)に退職の申入れをすれば、締め日をもって退職となりますが、締め日から15日以内(1か月の後半)の退職の申入れの場合には、締め日が到来しても退職できず、もう1か月先の締め日での退職となるというわけです。
なお、実務上は、就業規則や雇用契約により、「従業員は、1か月前に退職の申し出をしなければならない」というような定めがされているのが一般的ですから(労使間の合意により、この程度の修正は許容されるものと考えられます。ただし、1か月を超える予告期間の定めについては無効になる可能性もあります)、退職申入れをしてから1か月後の退職となるケースが多いでしょう。
ただ、以上のような規制はあるものの、「やむを得ない事由」がある場合は、直ちに退職することが可能であること(ただし、「やむを得ない事由」が労働者側の過失によって生じたものであるときは、労働者は使用者に対して、生じた損害を賠償する責任を負う)は、期間の定めがある場合と同様です(民法第628条)。
♦胸を張って、自分の身を守る選択を
以上のように、労働者側には、かなり広範に退職の権利、自由が認められていますから、「仕事を辞めたいのに、会社が退職を認めてくれない」という場合でも、ほとんどのケースでは、毅然と退職の申入れをすれば、しかるべき時期に退職をすることができます。
退職を申入れると、社長や上司から恫喝、脅迫されるとか、辞める場合には会社から金銭的なペナルティーが科される(と、会社側から、さも正当な法的根拠があるかのようにいわれている)ようなケースでは、私たち弁護士が介入して、退職申入れをし、使用者側と退職にあたっての諸手続を折衝することもあります。
このような悪質なケースにおいては、私たち弁護士ですら、非常に対応に苦慮するほど独自の価値観を頑として曲げない経営者も少なくなく、退職することや労働者との間のそれまでの経緯等々について、執拗に抗議、攻撃をしてきます。
しかし、これまで、退職ができなかったケースは全くありません。労働者が辞めると言えば、法的に止めようがないのが実際なのです。
退職することが法的に認められている場合に、労働者が罰金のようなものを課されることもありません。正当な権利行使に対し、制裁を科することは許されないのです。
労働基準法第16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めており、労働者の退職という「労働契約の不履行」についても、事前に違約金や損害賠償額の予定を合意しても、それは法的に無効であるという趣旨を明らかにしています。
「自分が辞めたら同僚がものすごく大変な状態に陥るので申し訳ない」という場合もあるでしょうが、退職者の代替人員を確保するのは使用者の責任であり、労働者の側が心配せねばならないことではありません。
胸を張って、自分の身を守るという選択をなさってください。
解決事例
従業員の業務上の落ち度を理由に、その従業員の父親が、会社から「次に同様のことがあれば保証人として500万円を支払う」との書面を作成させられ、その後、実際に従業員にさらなる落ち度があったとして会社から父親に対して500万円の支払請求がなされた訴訟において、請求棄却の判決を得た事例。
勤務先において、経営者から継続的に不倫関係になるよう求められ、体を触られたりするセクシャルハラスメント被害を受けていた女性が、精神的苦痛から退職を余儀なくされたという事案において、セクシャルハラスメントの様子を録画していた証拠に基づき、セクハラ被害と退職に伴う慰謝料等の損害賠償を請求し、請求後1か月で約150万円の損害賠償を受けることにより、早期解決した事例。
退職した会社から、在職中に多額の会社の資金を横領したとの嫌疑をかけられて損害賠償請求を受けた事案において、会社との交渉において、客観的な証拠がないものについては賠償を拒否することによって、少額の賠償金の支払のみにより事実上の解決を得た事例。
日常的に言葉によるセクシャルハラスメントを行う男性上司のもとで働いていた女性従業員が、当該セクハラの苦痛により、うつを発症し、離職を余儀なくされた事案において、女性従業員の依頼を受け、会社に対して損害賠償を求めた結果、約200万円の示談金を得て解決した事例。